multibook ERPの使いにくい点と改善方法
multibook ERPの使いにくい基本的な課題
multibookは海外拠点管理に特化したクラウド型ERPソフトとして知られていますが、他のERPシステムと同様に使いにくさを感じるユーザーも少なくありません。基本的な課題として最も多いのが「使い慣れない」という点です。従来のシステムからUIが変わると、従業員にとっては馴染みのないものとなり、操作に戸惑うことがあります。
特にmultibookのような海外拠点向けERPは、多言語・多通貨対応という特性上、インターフェースが複雑になりがちです。世界12言語と様々な通貨に対応している点は大きな強みですが、その分、画面構成や操作フローが複雑化する傾向があります。
また、高機能であるがゆえに細かい設定が必要であったり、入力項目が多かったりするため、設定に手間取ってしまうケースも見られます。特に初めて使用するユーザーにとっては、入力項目を把握しきれないといった問題が発生しやすくなっています。
multibook ERPと業務フローのミスマッチ問題
ERPシステムを導入する際の大きな課題の一つが、自社の業務フローとシステムのミスマッチです。multibookも例外ではなく、導入当初から完璧に自社業務に適したシステムに仕上げることは困難です。
特に海外拠点を持つ企業では、各国・各拠点ごとに業務フローが異なることが多く、それらをすべて満たすERPを構築するのは容易ではありません。導入時にフローをシステムにすり合わせる工程が設けられていなかったり、導入後の見直しが行われなかったりすると、ミスマッチの改善に至らず、使いにくいままとなってしまいます。
また、全体最適を目指すERPは、一部の部署では生産性が下がってしまう恐れもあります。例えば、販売管理の専用パッケージではないため、自社の細かな要求に対応できず、販売管理業務に合わない部分が生じることもあります。これは購買管理、在庫管理、生産管理、財務会計など全ての業務に当てはまる問題です。
multibook ERPの大量データ処理における使いにくさ
最近のビジネス環境では、取り扱うデータ量が急増しており、ERPシステムの処理能力が重要な課題となっています。multibookも従来はオンライン実行のみをサポートしていたため、月間数万、数十万件の取引明細を扱うユーザーにとっては処理速度や操作性に問題がありました。
大量データを扱う際の具体的な使いにくさとして、以下のような点が挙げられます：
- 検索や集計処理に時間がかかり、業務効率が低下する
- 大量データのエクスポート・インポート作業が煩雑になる
- レポート生成に時間がかかり、タイムリーな意思決定が難しくなる
- システム全体の動作が遅くなり、ユーザーストレスが増加する
これらの問題に対応するため、multibookは最近「大量データ対応機能」を導入し、バックグラウンド実行やデータ処理能力の向上を図っています。これにより、大量のデータを扱う日常業務が、より効率的に、ストレスなく行えるようになりました。
multibook ERPのデータ同期と連携の課題
複数の拠点や部門を持つ企業にとって、ERPシステム内でのデータ同期と他システムとの連携は重要な課題です。multibookは複数拠点の情報を一元管理できる機能を持っていますが、実際の運用では様々な課題が生じることがあります。
特に「Multi-Book Accounting（複数帳簿会計）」を実施する際には、データの同期に関する問題が発生しやすくなります。複数の帳簿間で一貫性と正確性を維持するのは困難な作業であり、変更が一つの帳簿で行われた場合、関連するすべての帳簿に正確に反映される必要があります。
また、multibookは様々な外部システムとの連携が可能ですが、連携設定の複雑さや、データ変換の問題が生じることもあります。例えば、あるユーザーからは「他財務システムとのデータ連携が可能なため、データ登録作業時間が削減された」という評価がある一方で、「会計伝票入力時も経費精算時と同じく、フロー承認を経た上で転記されるよう設定していただきたい」という改善要望も出ています。
データ同期と連携の課題を解決するためには、以下のような対策が有効です：
- 自動データ統合プロセスの実装
- 厳格な検証・照合手順の確立
- システム間のデータマッピングの最適化
- 定期的なデータ整合性チェックの実施
multibook ERPの使いにくさを改善する効果的な方法
multibookを含むERPシステムの使いにくさは、適切な対策を講じることで大幅に改善できます。以下に、効果的な改善方法をいくつか紹介します。
1. 研修の実施
ERPの研修を充実させることは、使いにくさを解消する基本的かつ効果的な方法です。特に重要なのは、従業員のITリテラシーごとにグループ分けして研修を実施することです。これにより、すべてのユーザーの習得度を高めることができます。
研修を計画する際は、以下の点に注意しましょう：
- 部門別・役割別にカスタマイズされた研修内容
- 実際の業務データを使用した実践的なトレーニング
- 定期的なフォローアップ研修の実施
- 参加しやすいスケジュール設定
2. 操作マニュアルの整備
詳細な操作マニュアルを整備することも、使いにくさを軽減する有効な手段です。マニュアルであれば研修のようなスケジュール調整は不要で、ユーザーが必要に応じて操作手順や機能の使い方を確認できます。
効果的なマニュアル作成のポイント：
- 視覚的な要素（スクリーンショット、図解）を多用する
- 検索しやすい目次や索引を設ける
- よくある質問（FAQ）セクションを設ける
- 定期的に更新して最新の情報を反映させる
3. フィードバックの収集と対応
システムの使いにくさを改善するには、実際のユーザーからのフィードバックを積極的に収集し、それに基づいて改善を進めることが重要です。導入後もフィードバックを集めて対応に努めることで、使いにくさを段階的に解消できます。
フィードバック収集の方法：
- 定期的なユーザーアンケートの実施
- ヘルプデスクへの問い合わせ内容の分析
- 部門ごとの意見交換会の開催
- システム利用状況のモニタリングと分析
4. 業務フローの見直し
ERPシステムと業務フローのミスマッチは、使いにくさの大きな原因です。システムを業務に合わせるだけでなく、業務プロセス自体を見直すことも検討すべきです。
業務フロー見直しのステップ：
- 現状の業務プロセスの可視化と分析
- 非効率なプロセスの特定
- ERPの機能を最大限活用できるプロセス設計
- 段階的な移行計画の策定と実行
5. サポートツールの活用
multibookでは「テックタッチ」というサポートツールを活用することで、使いにくさを大幅に軽減できます。このツールは、WEBシステム画面上に動く操作ガイドをリアルタイムで表示する機能や、用語説明や入力ルールといったツールチップの作成機能を提供しています。
また、利用動向も可視化できるため、活用されていない機能や非効率な操作、プロセスの途中でユーザーが操作に詰まる箇所などを発見し、効果的な改善策を講じることができます。
multibook ERPと他ERPの使いにくさの比較分析
ERPシステムの使いにくさを検討する際、multibookと他のERPシステムを比較することで、より適切な選択ができます。ここでは、multibookと大規模ERPシステム（SAP等）の使いにくさを比較分析します。
コスト面での比較
大規模ERPの導入では、数億円のコストがかかるケースもありますが、multibookは月額3万円～7万円程度から利用できるため、コスト面での負担が大幅に軽減されます。ただし、低コストであることがシステムの使いやすさに直結するわけではなく、機能や操作性のバランスを考慮する必要があります。
機能と複雑性の比較
| 項目 | multibook | 大規模ERP（SAP等） |
|---|---|---|
| 機能の豊富さ | 中～高 | 非常に高い |
| 操作の複雑さ | 中程度 | 高い |
| カスタマイズ性 | 中程度 | 非常に高い |
| 導入期間 | 比較的短い | 長期間 |
| 学習コスト | 中程度 | 高い |
multibookは大規模ERPに比べて機能がやや限定的である分、操作の複雑さも抑えられている傾向があります。ただし、海外拠点管理に特化しているため、その領域では十分な機能を備えています。
サポート体制の比較
multibookのサポート体制は、ERPや事業の海外展開に精通したプロが対応し、複数言語での対応も可能です。一方、大規模ERPは豊富なサポートリソースがありますが、コストが高く、対応に時間がかかることもあります。
実際のユーザー評価では、multibookについて「導入や運用に関して丁寧に教えてもらえた」「シンプルな画面と直感的に使える操作性のよさがいい」といった意見がある一方で、「会計伝票入力時のフロー承認機能の追加」「過去に投入した経費申請内容の再利用機能」などの改善要望も出ています。
データ処理能力の比較
従来、大量データ処理は大規模ERPの得意分野でしたが、multibookも最近「大量データ対応機能」を導入し、バックグラウンド実行やデータ処理能力の向上を図っています。これにより、月間数万、数十万件の取引明細を扱う企業でも、より効率的な運用が可能になっています。
総合的に見ると、multibookは中小企業や海外拠点を持つ企業にとって、コストパフォーマンスに優れたERPソリューションと言えますが、大規模な業務や特殊な要件がある場合は、使いにくさを感じる可能性もあります。導入前に十分な検証と、自社の業務フローとの適合性を確認することが重要です。
multibook ERPの内部統制強化と使いやすさのバランス
multibookの重要な特徴の一つに、内部統制の強化機能があります。しかし、内部統制を強化すればするほど、使い勝手が犠牲になるというジレンマが生じることがあります。このバランスをどう取るかが、システム導入の成否を左右する重要なポイントとなります。
内部統制強化の利点
multibookでは、日本語でさまざまな管理項目を表示できるほか、適切な権限設定も行えるため、内部統制の強化が可能です。これにより、以下のようなメリットが得られます：
- 不正行為の防止と早期発見
- 業務プロセスの標準化と効率化
- コンプライアンスリスクの低減
- 経営の透明性向上
特に海外拠点では、現地スタッフがローカルソフトで管理を行うと業務がブラックボックス化するリスクがありますが、multibookを使用することでこうした問題を回避できます。
使いやすさへの影響
一方で、内部統制を強化するために導入される承認フローや権限制限は、日常業務の使いやすさを低下させる要因ともなります。例えば、あるユーザーからは「会計伝票入力時も経費精算時と同じく、フロー承認を経た上で転記されるよう設定していただきたい」という要望がある一方で、過度な承認プロセスは業務効率を下げる可能性もあります。
バランスを取るための方策
内部統制と使いやすさのバランスを取るためには、以下のような方策が有効です：
- リスクベースのアプローチ：高リスクの業務には厳格な統制を適用し、低リスクの業務では簡略化する
- ユーザー体験の最適化：必要な統制は維持しながら、UIの改善やワークフローの効率化を図る
- 自動化の活用：手動の承認プロセスを自動化し、業務効率と内部統制の両立を図る
- 段階的な実装：最初から厳格な統制を導入するのではなく、段階的に実装して使いやすさとのバランスを調整する
multibookのログ管理や内部統制支援機能を活用することで、海外拠点の管理レベルをIPOが求めるレベルまで引き上げることができますが、その際も使いやすさを考