SAP S/4HANA サポート期限と移行対応の重要ポイント
SAP S/4HANA サポート期限の最新情報と変更点
SAP S/4HANAのサポート期限に関する最新情報を把握することは、企業のERP戦略において非常に重要です。2022年9月にSAPは、S/4HANAの新リリースとメンテナンス方針の変更を発表しました。大きな変更点として、これまで年1回だった新バージョンのリリースが、S/4HANA 2023から2年に1回に変更されました。また、標準保守期限も5年から7年に延長されています。
この変更により、企業はバージョンアップの計画を立てやすくなりました。従来の5年間の標準保守期間では、3年を経過した頃から次のバージョンアップを考え始める必要がありましたが、7年に延長されたことで準備期間に余裕ができました。
特に注目すべき点として、S/4HANA 2023は次世代テクノロジーとレガシーソフトウェアとの互換性を実現するための主要リリースと位置付けられています。レガシーバージョン(S/4HANA 1709、1809、1909)を利用中のユーザーには、2025年12月31日までの延長メンテナンスオプションが提供され、直接S/4HANA 2023にアップグレードする道が開かれています。
SAP ERP 6.0 から S/4HANA への移行期限と2027年問題
いわゆる「2027年問題」とは、SAP ERP 6.0(SAP Business Suite 7を含む)の標準サポートが2027年末に終了することを指します。当初は2025年末が期限でしたが、2020年2月に2027年末まで延長されました。しかし、この延長はすべてのバージョンに適用されるわけではありません。
重要なポイントとして、EHP(エンハンスメント・パッケージ)6以降を使用している場合のみ2027年末までサポートが延長され、EHP5以前のバージョンは2025年末でサポートが終了します。実際には、ECC 6.0ユーザーの約半数がEHP5以前を使用しているとされ、多くの企業が2025年末というより早いサポート終了日に直面しています。
また、延長保守を利用すれば2030年末までサポートを受けることができますが、これには標準保守料金に加えて追加コスト(ECC 6.0の場合は約2%、S/4HANAの場合は約4%)が発生します。
SAP S/4HANA 移行の3つの方法とそれぞれのメリット
SAP S/4HANAへの移行方法は大きく3つのアプローチがあり、それぞれに特徴とメリットがあります。
- Brown Field(コンバージョン方式)
- 既存のERPシステムの設定やカスタマイズをそのまま引き継ぎ、データ構造のみをS/4HANAに合わせて変換する方法
- メリット:現場への影響が最小限で済む、既存の業務プロセスを維持できる
- デメリット:過去のカスタマイズや負の資産も引き継がれるため、S/4HANAの新機能を十分に活用できない可能性がある
- Green Field(リビルド方式)
- 新規にS/4HANAシステムを構築し、業務プロセスも見直す方法
- メリット:S/4HANAの最新機能を全面的に活用できる、業務プロセスの刷新が可能
- デメリット:費用と時間がかかる、業務への影響が大きい
- BLUEFIELD(SNP社のツールを使用)
- データとシステムを分離し、システムを先にS/4HANA化した後、必要なデータを選択的に移行する方法
- メリット:システムのダウンタイムをほぼゼロに抑えられる、移行時間を大幅に短縮できる(従来の1/4程度)
- デメリット:専用ツールの導入が必要
企業の規模や業務の複雑さ、カスタマイズの程度によって最適な移行方法は異なります。例えば、カスタマイズが少なく標準機能を多く使用している企業はGreen Fieldが適している場合があり、逆に複雑なカスタマイズがあり業務への影響を最小限にしたい場合はBrown Fieldが選ばれることが多いです。
SAP S/4HANA バージョン別のサポート期間と計画的な移行の重要性
S/4HANAの各バージョンには、それぞれ異なるサポート期限があります。特に注意すべきは、S/4HANA 2020は2025年末にメインストリームサポートが終了することです。また、S/4HANA 2021は2026年、S/4HANA 2022は2027年に終了します。
S/4HANA 2023からは新しいリリースサイクルとサポート期間が適用され、メインストリームサポートは7年間(2030年末まで)となります。このため、今後新規導入や移行を検討している企業にとっては、S/4HANA 2023を選択することで、より長期間のサポートを受けることができます。
計画的な移行の重要性として、バージョンアップのプロジェクトは規模によって半年から1年以上かかることがあります。特に大規模なシステムや複雑なカスタマイズがある場合は、十分な準備期間を確保することが必須です。サポート終了の直前になって慌てて移行を進めると、リソース不足や品質低下のリスクが高まります。
SAP S/4HANA 導入によるDX推進と生成AI活用の可能性
SAP S/4HANAへの移行は単なるシステム更新以上の意味を持ちます。SAPは、S/4HANAを企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するための「デジタルコア」と位置づけています。特に注目すべきは、2023年にSAPが発表したAI戦略の大きな変更です。
SAPは従来、自社でAIモデルや機械学習エンジンの構築に取り組んでいましたが、現在はOpenAIのChatGPTやGoogle CloudのGeminiなどの汎用AIモデルを活用する方向に方針転換しました。現在、9社とのアライアンスで生成AI機能を実装する戦略を進めています。
この生成AI機能を最大限に活用するためには、「Fit to Standard」(標準機能への適合)を実現し、1〜2カ月のサイクルでバージョンアップを実施して常に最新機能を使える環境が必要です。つまり、S/4HANAへの移行は、単にサポート切れを回避するだけでなく、最新のAI技術を活用したビジネス変革の基盤を整えることにもつながります。
具体的なメリットとして、インメモリデータベースを活用した高速処理、肥大化したシステムのスリム化、運用管理コストの低減などが挙げられます。また、リアルタイムなデータの一元管理や経営の全体最適化を実現する契機となります。
S/4HANAクラウド版を選択することで、テクニカルな部分の作業はSAPが担当するようになり、バージョンアップの負担も軽減されます。これにより、企業はより本質的な業務改革やイノベーションに注力できるようになります。
SAPのS/4HANA新リリースとメンテナンス方針の詳細情報
SAP S/4HANA 移行を検討する企業のための実践的なステップ
S/4HANAへの移行を成功させるためには、以下の実践的なステップを踏むことが重要です。
- 現状分析と影響評価
- 現在使用しているSAPバージョンとEHPレベルの確認
- カスタムコードやアドオンの洗い出しと影響分析
- 周辺システムとの連携状況の把握
- 移行戦略の策定
- 移行方式(Brown Field、Green Field、BLUEFIELD)の選定
- ターゲットバージョンの決定(S/4HANA 2023の検討)
- オンプレミスかクラウドかの選択(RISE with SAPの検討)
- ロードマップと予算の策定
- 段階的な移行計画の立案
- 必要なリソースと予算の見積もり
- リスク管理計画の策定
- パイロットプロジェクトの実施
- 小規模な範囲でのテスト移行
- 問題点の洗い出しと対策
- 本番移行のための知見蓄積
- 本格移行の実施
- データ移行と検証
- ユーザートレーニング
- 移行後の安定化支援
特に重要なのは、移行前に「Business Scenario Recommendation」などのSAPが提供する無料診断サービスを活用し、S/4HANAへの移行によって得られる具体的なメリットを把握することです。また、SAP S/4HANAの価値を最大化するために、単なるシステム移行ではなく、業務プロセスの見直しやデジタル化戦略と連携させることが成功の鍵となります。
移行プロジェクトの成功率を高めるためには、経験豊富なパートナーの選定も重要です。SAPは近年、新しいパートナーエコシステムの構築に力を入れており、特にクラウド移行を支援するパートナーが増加しています。自社の状況に最適なパートナーを選ぶことで、スムーズな移行と移行後の継続的な価値創出が可能になります。
以上のステップを計画的に進めることで、サポート期限切れのリスクを回避しつつ、S/4HANAの新機能や生成AIなどの最新テクノロジーを活用したビジネス変革を実現することができます。