音声認識 AI
音声認識AIは、人間の発する音声をコンピューターが理解し、テキストデータに変換する技術です。近年、ディープラーニングの発展により音声認識の精度が飛躍的に向上しています。
音声認識AIは主に以下のような仕組みで動作します。
- 音声の入力:マイクなどから音声データを取り込む
- 特徴量の抽出:音声データから特徴量を抽出
- 音響モデルによる認識:特徴量を音響モデルと照合し、音素列に変換
- 言語モデルによる認識:音素列を言語モデルと照合し、単語列に変換
- テキストデータの出力:認識結果をテキストデータとして出力
音声認識では、大量の音声データを機械学習させることで、高い認識精度を実現しています。
その結果、一定の精度の音声が対象なら90%以上の認識ができるようになっています。しかし、人間が発する音声は必ずしも発音が正しいとは限らず、異口同音語や誤認識が出てきてしまいます。
そこで、認識したテキストにAIを組み合わせると、前後の文脈から誤認識部分を修正してくれるんですね。
音声認識AIの活用事例
音声認識AIは様々な分野で活用されています。
- スマートスピーカー:音声でデバイスを操作できるAIアシスタント
- コールセンター:自動音声応答システムによる業務効率化
- 翻訳機:リアルタイムの音声翻訳を実現
- 文字起こし:会議の議事録作成などに活用
- 異音検知:製造ラインでの設備異常の早期発見
スマートスピーカー
スマートスピーカーは、もっとも身近な音声認識AIデバイスと言えるかも知れません。
短い言葉でも聞き取れないケースもあり、認識精度は高いとは言えませんが、手頃な価格で購入できます。
照明、エアコン、テレビ、電動カーテンなど幅広い家電を音声操作可能
「アレクサ、照明をつけて」「アレクサ、エアコンを24度にして」などの発話で可能。
Google Home (Google アシスタント)
照明、エアコン、テレビ、扇風機など多様な家電の音声操作に対応
「OK Google、テレビをつけて」「OK Google、エアコンの冷房をつけて」などの発話が可能。
Apple HomePod (Siri)
照明、サーモスタット、ロック、プラグなどのHomeKit対応デバイスを音声制御できる
「Hey Siri、リビングの照明を消して」などの指示が可能
Panasonic SC-VA1
エアコンやテレビなどパナソニック製のデバイスを中心に音声操作可能
AI自動音声応答システムによるコールセンター
コールセンターにおけるAI自動音声応答システムの導入は、業務効率化や顧客満足度向上に大きく貢献しています。主な事例と注意点をまとめると以下の通りです。
IVR(Interactive Voice Response)による自動応答
顧客が選択した番号に合わせて自動で専門のオペレーターにつなぐシステム
レオパレス21では年間約2,633時間の作業時間削減、約460万円のコスト削減効果
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音声認識AIによるリアルタイム応答
顧客の発話を音声認識し適切な応答を自動生成します。業界独自の専門用語のチューニングにより認識精度を向上させる必要あり。
通話内容の自動テキスト化
通話データをAIで自動書き起こし、分析や共有に活用。JALカードやアドバンスト・メディアなどで導入事例があります。
チャットボットによる自動応答
テキストや音声情報から適切な回答を自動選択します。ライフネット生命ではLINEチャットボットを活用。
AIの自動音声対応の導入には注意点もあります。
- 方言や特徴的な発音への対応が課題
- 導入・運用コストや、システムトラブル時の対策が必要
- オペレーターがシステム利用に慣れるまで時間を要する
- 複雑な問い合わせには人間オペレーターへの引き継ぎ体制が重要
今のところ、AIの自動音声対応だけで完結することは難しく、人間オペレーターとの連携が必須になります。
というのも、何かを聞きたくてコールセンターに電話するようなケースではとても役に立ちそうです。しかし、クレームなど感情を伴うコミュニケーションの場合は、やはり人間が対応したほうが良いケースもあるんですよね。
それでも、企業にとってはコストを大幅に削減できるソリューションと言えるでしょう。
リアルタイム音声翻訳機
AIによるリアルタイム音声翻訳機のおすすめをいくつかご紹介します。
スマホでも音声翻訳が可能ですが、以下のような専用機が人気の背景は、翻訳のスピードと精度。ほぼリアルタイムに翻訳が可能です。
ポケトークは2021年のベンダー別販売額シェアNo.1の音声翻訳機です。個人から法人まで幅広く利用されており、3,000社以上が導入しています。
- ボタンを押して話すだけでリアルタイムに85言語の音声翻訳が可能
- 関西弁など独特なイントネーションも把握
- AI会話レッスン機能、カメラ翻訳機能付き
- 130以上の国と地域で使用できるeSIM内蔵
- 議事録作成のためポケトークセンターにテキストデータ送信可能
価格はモデルにより14,850円〜34,980円です。
海外旅行での利用に適したモバイル型オンライン音声翻訳機です。
- 104言語に対応
- 60か国で使用可能なeSIMを搭載し、2年間の通信費用が無料
- ワンボタンで簡単操作
- 翻訳したテキストの同期が可能
通常価格は30,800円です。
iFLYTEK Smart Translator
AI搭載の高性能翻訳機です。異なる言語をストリーミング技術で相互にリアルタイム翻訳し、1秒未満で結果を表示。104言語に対応しています。
音声認識によるテキスト化機能も搭載しており、議事録作成などにも活用できます。テキストはクラウドで共有可能です。
AI文字起こし
AI文字起こしとは、音声をAIが解析して短時間またはリアルタイムでテキストを作成することです。ディープラーニングの登場により、2010年代後半から品質が急激に上がりました。
AI文字起こしのメリットは以下の通り。
- 議事録作成の効率化
人力に比べ大幅に時間を短縮できる - 情報共有の促進
テキスト化により情報の整理や検索が容易になる - コスト削減
人件費を大幅に抑えられる
AI文字起こしサービスとして、具体的には以下のようなものがあります。
- AIによるウェブサービス:文字起こしさん、Texter、Sloos、Notta など
- 専用デバイス:PLAUD NOTE
- スマホ用アプリ:Speechy Lite、Google Pixel の録音アプリなど
- PCインストール型アプリ:AmiVoice ScribeAssist など
具体的な利用シーンは以下の通り
- 会議やミーティングの議事録作成
- インタビューや取材の書き起こし
- 動画の字幕作成
- 音声メモの文字化
かなりの数のサービスが出回っていますが、何を基準に選べばいいのでしょうか?
- 利用目的に合った機能を備えているか(話者分離、専門用語対応など)
- 利用デバイスに対応しているか
- 予算に見合った料金プランがあるか
OpenAIのWhisperなど、生成AIを活用した文字起こしサービスが増加しており、さらなる精度向上が期待されます。一方で、編集作業の効率化のためにChatGPTなどの文章生成AIとの組み合わせも進んでいます。
製造ラインでの異音検知
製造ラインでの異音検知にAI音声認識技術が活用されている事例が複数あります。
製造設備の故障や不具合の予兆となる異音を、AIが学習した正常音と比較して早期に検知することで、トラブルを未然に防ぐことが目的で導入されています。
従来は熟練技術者の経験と勘に頼っていた異音検知を、AIが定量的に判断することで、技能の属人化を解消できるんですね。また、検知精度を向上できる点もポイント。
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竹内製菓では、製造ラインのチェーンコンベアの異音をAmazon SageMakerの機械学習モデルで検知する予知保全システムを導入し、生産ライン停止のリスクを大きく低減しました。
日立製作所は、発電所の設備保全で行っていた聴力点検をAIによる異音検知に置き換え、熟練技術者と同等の異常判断を実現し、点検作業の自動化・省力化を実現。
関連 異音検知ソリューション:2021年3-4月号:はいたっく:日立のIT情報誌
Hmcomm株式会社は、音声認識技術に加えて異音検知の事業を展開し、データ解析も組み合わせたワンストップソリューションの提供を目指しています。
関連 「FAST-D」AI異音検知ソリューション | Hmcomm株式会社
製造業の現場でAIによる異音検知を導入することで、設備トラブルの予兆を早期発見し、生産ラインの安定稼働や保全作業の効率化・自動化を実現できることがわかります。今後もAI音声認識技術の活用が製造業の課題解決に貢献していくと期待されます。
音声認識AIのまとめ
今後は、人型ロボットやハンズフリー機器の開発など、さらに幅広い分野での活用が期待されています。
音声認識AIの課題としては、雑音や方言への対応、話者の個人性への適応などが挙げられます。一方で、ディープラーニングの発展により認識精度は着実に向上しており、利用者の増加とともにさらなる進化が見込まれています。
音声認識AIは、人とコンピューターのインターフェースとして重要な役割を担うと考えられ、ビジネスや生活に大きな変革をもたらすことが期待されています。